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“経済効果”と“迷惑”が紙一重 「ロケ地巡礼」の問題点とは?
ロケ地めぐりの経済効果は、”聖地巡礼”ブームとの相乗で年々加速
また2011年に放映されたアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』(通称“あの花”)のクライマックスシーンを飾る、埼玉県秩父市の龍勢祭に11万人が殺到(前年は7万5000人)。ほか、アイドルがMVやバラエティ番組で使ったカフェや居酒屋を聖地としてファンが訪れることも。お店側も、そのアイドルが食べたメニューを“セット”として打ち出す例もある。
実際、知名度アップと大きな経済効果が見込めることから、聖地巡礼を歓迎する自治体は少なくなく、町おこしの一貫として自らアピールすることもある。例えばアニメ『ガールズ&パンツァー』の聖地、大洗町。売店にはガルパンのクリアファイル、ストラップなどがグッズ販売。鹿島臨海鉄道の車両がガルパンのキャラでラッピングされているほか、商店街でも店主たちがキャラクターのステッカーをプレゼントする光景が当時見られていた。“巡礼者”の方もこれらに“お布施”することで、単なる当該箇所へ行きたい欲のほかに、作品を盛り上げたいという想いも充足。実際に功を奏したWinWinの関係が築かれている。
“あまちゃんロケ地巡り”が根強い人気 ロケ地としての活動が“地域資源”に
「エンドロールで地名や施設名などが流れることによってブランド力アップにつながるというのが自治体の思惑」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「これが“地域資源”になっており、実際に様々な自治体で試そうとする動きはある。ただお金がかかることなので、資金難の小さな自治体ではやりたくてもやれない状況。また『フィルム・コミッション』のノウハウの少ない新たに始めた自治体だと互いの理解が噛み合わないことも当然あり、その結果、様々なトラブルを生んだ例も少なくない。どんなことにも問題点はつきもので、この潮流もまだ過渡期という証左」(衣輪氏)と続ける。
迷惑がられる“野次馬”の存在、一方で撮影側のロケ地選定に問題も?
しかし、自分の知っている土地や馴染みのある場所がテレビで映るとつい “お知らせ”したくなるのは人の性。ただ野木氏の発言には「放映が終わった後にロケ地巡りしたいです」「撮影終了後の節度を保った聖地巡礼と、撮影中の迷惑なロケ地押しかけをちゃんと区別していきたいです」など多くの賛同も寄せられており、ファン間でも節度を守ろうとする動きはある。
逆に「ロケ現場の選定に問題はないのか?」という声も。公共の場であれば、人が集まるのは当然のこと。そこを通りたい人、使用したい人もいる。SNSを見ると「撮影のせいで迂回させられた」のほか、「店員ですが、お店の前でロケがあったとき、ADさんが謝りに来たのに、立場が上っぽい人が横柄で興ざめした」などの苦言も。
「まだ完全ではないですが撮影側もさまざまなアイデアでこの問題を減らそうとしています。例えばリフォーム系番組であれば、ロケ現場の周囲を撮影ではなく“工事中”(ウソではない)としてスムーズな通行を促す場合も。ですが今後のさらなる改善が望まれています」(衣輪氏)
聖地巡礼は作品の応援にもつながるし、地域や店舗を応援することにもつながる。しかし節度がないと成り立たない。特定・拡散による撮影に迷惑をかける行為はもちろんのこと、ドラマ撮影後も近隣に住んでいる方にとっては日常の場であることは忘れてはいけない。また撮影側も「いい作品を作る」だけでなく、配慮を忘れないよう日々アイデアを出し合うことも作品作りの重要な一部となるのではないだろうか。
(文/西島亨)